本文2回目。いよいよ“先生”登場だ
夏休みを鎌倉で1人過ごすことになった語り手の“私”が、海水浴客で混み合う鎌倉の海辺の tea house(脱衣所のある海の家のこと)で、先生を見かけ興味を抱いた。なぜなら、先生は Westerner(つまり、西洋人) と一緒にいて、最初、際立って肌の色の白い人に目がいき、その連れが先生だった。2人は海に入り、人混みを抜けて沖へ泳ぎ出し、Uターンして真っ直ぐ引き返し、水浴びもしないで服を着るなり帰って行った、という下り。
なんで??辞書にない。まさかdone+ing?
At the tea house, they dried themselves without washing the salt off with fresh water from the well and, quickly donning their clothes, they walked away.
(Edwin McClellan訳「Kokoro」より引用)
この長いセンテンスの最後から6つめの単語、donning がわからない。??? 文を読んだ後、先生からの質問がある。「donningってどういう意味ですか?」あ、キタ〜!(以下、たどたどしい英語〜単語の羅列で→)いや、辞書を引いたけど載ってなかったんで。もしかして、do, did, done のdone にingが付いたもの??いや、それならnnにはならへんしなぁ・・・しどろもどろ。
アーロン先生の説明はこうだった
donning の原形は don。do onがくっついた縮約形で、対称的な言葉は?そう、doff やね。do onは、今の表現では put on、服を着たり、帽子をかぶったり、靴を履く、つまり身に着けるという意味やねん。doffは反対に、do offで脱ぐという意味。今の自然な言い方では、take offを使ってるけど、古い表現として覚えといたらいいよ。(というニュアンスの英語を勝手に大阪ローカル風に意訳してみました)
*アーロン先生のオマケ
翻訳者がこの don が使ったのには、意図があるんや。don や doff は、ビクトリアン・ピリオド(ビクトリア女王の時代:19世紀)の文学などに用いられた、堅苦しい表現。訳者は明治を生きた文豪・漱石らしさを表現するために、don を選んだというわけや。
(想像するにイギリスでも、日本のように文語体=フォーマル、口語体=カジュアルという使い分けがあったということなんやね。へんな大阪弁アレンジ、お許しを。なんかカタイ話になると、つい面白くでけへんかなと思って)